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奸譎 [12月]

揺らめかせながら

咲いては散って
跳ねては堕ちる

惑わしながら

見詰めては逸らし
撓っては放れる

自由など
何処にもなくて

愛など
何も感じられなくて

それでもこうして
繋がれているのは

嫌がおうにも
悶えているのは

まだ欲しいと
あなたが欲しいと

心があなたを
求めているから

魂があなただけを
探しているから

目蓋を閉じても
消えてくれない

触れたくなるほどの面影を
いつまで追いかけるの

心を閉ざしても
消すことができない

馨しいほどの情景を
いつまで探し続けるの

この思い出を消して
この記憶を棄てて

あなたの貌も
あなたの声も

あなたの温もりさえも

ここから
消えてしまいそうなのに

全て
失ってしまいそうなのに

私に触れていた
あなたの撫でた指が

私に残したままの
あなたが付けた痕が

なぜかいつまでも
消えることはない

どうやったら
涙を止められる

どうやったら
全てを終えられる

呪縛 [12月]

あなたになら
全てを捧げられる

あなたにだけ
全てを曝け出せる

こんな気持ち
知らなかった

こんな想い
分からなかった

溺れるようで
崩れるようで

知らなければよかった
気付かなければよかった

こんなにも
あなたしか
見えなくなるくらいなら

こんなにも
あなたしか
愛せなくなるくらいなら

どうしてだろう
いつからだろう

ずっと
きっと

あなただけを見ていた
あなただけを感じていた

そうしたかったわけじゃない
そうするつもりさえなかった

なのに気付けば

あなたしかいなくて
あなたしか見えなくて

いつからこんなにも

あなたしか愛せない
あなたしか感じられない

私の心を放して
私を自由にして

あなたを失ったら

もう生きていくことさえ
できないから

吻合 [12月]

緩く結んだ糸が
自ずと解けるように

このまま全てが

解けて
放れてしまえば

再び縁を
繋ぐことが
できるだろうか

硬く結んだ糸が
自由を赦さないように

これからもずっと

縺れて
絡まり合えば

あなたへと
辿り着くことが
できるだろうか

全てを無くしても
気持ちだけは留まって
記憶だけは消えない

手から離れても
心だけは留まって
涙は枯れない

熱い吐息を
食み合いながら

溶け合うように
縺れ合ったら

いずれ
ほつれてしまうことを
既に覚悟していて

紡ぐほどに繋がる
細い糸は

いくら縋ったところで

容易く切れてしまいそうで
見失ってしまいそうで

掴むことさえ躊躇う

あなたのとの縁を
このまま

なかったことになんて
したくないから

何も出来なくとも
何も守れなくても

悪足掻きをしてでも
繋ぎ止めようとしている

お願い

お願いだから

このまま
ほつれるように
放れてしまわないで

お願いだから

このまま
いつまでも
絡み合ったままで

お願いだから

このまま
あなたの唇に
重ねたままで

もう放れないで

決して離さないで

無終 [12月]

隣にいるだけで
幸せだった

声が聞こえるだけで
安心できた

名前を呼ぶだけで
笑顔が零れた

視線が合うだけで
胸が騒めいた

もし触れてしまったら
壊れてしまうでしょう

もし愛してしまったら
消えてしまうでしょう

こんなに好きになるなんて
こんなに忘れられなくなるなんて

あなたには
何も求めたはずないのに

あなたには
何も感じていないつもりだったのに

こんなに感じてる
こんなに愛してる

あなたのことなんて
忘れられたらいいのに

あなたのことなんて
棄ててしまえればいいのに

苦しくても構わない
辛くても逃れられない

あなたから
離れたくはないから

あなたから
目を逸らしたりはしないから

あなたには
私の心が見えなければいいのに

あなただけは
私の全てを感じなければいいのに

このまま呼吸が止まってしまえば
永遠の時間が手に入るでしょう

このまま二人が抱き締め合えば
一つに溶け合うことができるでしょう

望んではいけない夢を
手放すには

求めてはいけない現実を
忘れるには

何も始めなければいい
何もせずにいればいい

千尋 [12月]

まるであなたが

まだここにいるみたい
私に触れているみたい

ここにはいないのに

もういないのに

触れられるはずないのに

いつまでも
あなたが忘れられない

いつまでも
あなたから放れられない

今でもこんなにはっきりと
あなたを覚えるのに

ずっと消えることなく
あなたが残り続けるのに

いつになったら
あなたを忘れられる

いつになったら
あなたを棄てられる

いくら逃げても
いくら隠れても

あなたの幻が
追って来る

あなたの手が
迫って来る

いつだって
逃げ惑う
私を掴まえて

いつだって
抵抗する
私を押さえ付ける

いつまでも終わらない現実は
いつまでも続く悪夢は

あなたが最初に与えた試練
あなたが最後に与えた罰

これがあなたの望みなの
これがあなたの仕打ち

どうして私を
連れて行ってくれなかったの

どうして私を
置いて行ってしまったの

あなたがいなくて
生きていけるはずなんてないのに

あなたがいなければ
生きている意味なんてないのに

もうこれで終わらせるから

もうあなたのせいにしない

踠けば踠ほど
足掻けば足掻くほど

深みへと
引き摺り込まれるように

沈んでいく
溺れていく

もう戻れない

あなたの手も
あなたの声も

あなたの光さえも

もう届かない