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絡繰 [01月]

果てる夢を
待ち望むほど

きっと愛に
飢えていて

朽ちる現実が
悦びに溢れるほど

きっと全てを
捨ててしまう

生きていたら
傷つけてしまいそうで

愛してしまったら
傷ついてしまいそうで

逃げ惑うのは
檻の中だと

待ち侘びるのは
牢の端だと

汚れた身体は
剥ぎ取ることさえできず

失った心は
何処にも見当たらない

涙が零れていることさえ
気付かないのなら

泣くことを
諦めてしまえばいい

触れるもの全てを
穢してしまうのなら

繰り返すことを
止めてしまえばいい

これが自分だと
思えなくて

これを望んだと
思いたくなくて

ここに何があるだろう

私は誰だというのだろう

蜷局 [01月]

他の何を見て
羨ましがるの

他の誰を見て
妬めばいいの

難しいことではないとしても
楽しくはない

手が込むほどに喜ばしくても
辛くて仕方がない

何かを望めば
何かを諦める

何かを握れば
何かを手放す

今しかできないことをやればいい
今だからできることをやればいい

同じ時宜は二度と来ない
この機会を掴めばいい

何も考えずに
波に乗り

何にも抵抗せずに
風に吹かれ

前に進めば
足を運べば

今では到底思い浮かばなかった
今には何も思い付かなかった

世界が広がるのに
未来が輝くのに

諦めたのは
手放したのは

あなたでしょう
自分自身でしょう

見たい夢を見ればいいのに
叶えたい夢を叶えればいいのに

現実が簡単じゃないことくらい
子どもの頃に悟った

社会が冷たいことなんて
始めから気付いていた

自分の力でできることなんて
限られていて

誰かを羨んでも
何も幸せにならない

だから誰かを
傷つけたくなる

そんな自分になりたくなくて
必死に笑っているのに

どうしていつも
涙が溢れるのだろう

どうしていつも
傷ついてしまうのだろう

虚しくても
寂しくても

生きることを
やめられはしない

愛することを
諦めきれない

分岐 [01月]

佇んでいれば

このまま
止まるかもしれない

奇跡も
時間も
呼吸も

美しい雨は
少しずつ沁み渡り

いつしか
全てを覆い尽くす

濡れなくても
触れなくても

私は変わらないし

目の前の雨は
止みそうにない

消せない事実を
隠すこともできない

関係ないと
疎んじていたことさえ

自分の目の前で
呆れるくらいに
落魄しては

それをなかったと
言い張ることも
できなくしていくだけ

ここにいるのは
こうして出逢ったのは

ただの偶然

始めから

認めてしまえば
諦めてしまえば

苦しまなかったのかもしれない
辛くなかったのかもしれない

今さら手放したらきっと
自身が壊れるしかない

いつか止む雨は
余りにも気まぐれで

絶え間なく降る雪も
吹き抜ける風も

薙ぎ倒す嵐も
轟音の落雷も

自由に見えても
現実には程遠い
狂った時間を彷徨う

遠い空で
小さな瞬きが

私という
小さな塊にさえ
手を伸ばして

大きな存在として
消し去ろうとしている

ここにいるのは
こうしているのは

きっと必然

頬に触れた雨は
もう止んでしまうのに

泣き止みそうな空が
重く覆い被さる

これ以上は
望んではいけないと

私を止めるため

このまま凍えたら
あたためてくれるだろうか

淡い期待の上に
雪が舞い落ちて

低い天蓋から
優しく零れ落ちてくる

見上げれば

私を身体ごと掬い上げるように
私の心に降り積もるように

身体と心が引き千切られる

このまま
こうしていたら

きっとこの空を
貫けるでしょう

このまま
私の身体を持ち上げて
私の心を融かして

そのまま
空へ連れていって

漂揺 [01月]

浮かんでいればいい
このまま

手放してしまえばいい
すべてを

楽になれるから
苦しくないから

何も考えなくていい
何も感じなくていい

ただ時間が流れるのを
待てばいい

ただ過ぎ去るのを
見ていればいい

生きていくためには
仕方のないこと

生き延びるためには
諦めるしかないこと

このまま独り
溺れてしまえれば

全て忘れられるのに

このままここで
果ててしまえば

意識を手放せるのに

体を這う違和感も
魂を蠢く感触も
心を貪る感覚も

消してしまえる
棄ててしまえる

偽っていれば
誰も傷つかない

欺いていれば
誰も傷つけない

こうしていても
何も変わらなくて

こうしていれば
何も変えずにすむ

何も言わず
黙って

目を伏せて
俯いて

耳を塞いで
蹲って

そうやって
笑顔をつくる

そうやって
嘘を重ねる

身体を伝って
流れ落ちるように

包んだ手のひらから
零れ落ちるように

これは嘘だと
これは夢だと
これは幻だと

ただ
信じればいい

このまま
死んでいればいい

死んだように
佇んでいればいい

攫取 [01月]

その愛おしい
顔をみせて

僕しか知らない
顔をみせて

もっと甘く
もっと可愛いらしく

その声で
あなたの声で

僕のために
啼いてみせて

もっともっと
愛してあげるから

その厭らしい声で
その啼き声で

僕の名前を
呼んでみせて

このまま溺れたら
もっと奥に堕ちたら

きっと僕しか
見えないでしょう

きっと僕しか
助けられないでしょう

震えながら乱れて
啼きながら求めて

いつまでも
終わりなど来なくて

いつまでも
あなたに繋がれたまま

甘い声は纏わり付くように
身体から放れなくて

撫でる指は疼くように
心を弄って

見詰めるほどに震え
触れるほどに溺れる

腕の中で
呼吸を乱す身体は

もう溶けてしまいそうで

囁くほどに
虚ろに輝く視線は

抱き締めてしまいそうで

甘い言葉で
逃がさないように

呪文を掛ける

揺らめく腰を
煽るように

悪戯に撫でる

こんなにも
近くに居るあなたが

遠くに流されて
しまいそうで

こうして
二人で居るあなたが

此処から居なくなって
しまいそうで

いくら触れていても
足りないから

いくら言葉にしても
不安だから

僕にはただ強く
抱き締めることしかできない