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虚実 [02月]

嘘を重ねて
事実を作り上げれば

きっと逢えるから
もっと愛するから

もっともっと
嘘を重ねる

見つからないように
気付かれないように

もしそれが
自分を苦しめたとしても

それがもし
未来を壊したとしても

今手に入るのなら
それで構わない

大切なものを失うほど
怖いものはないから

愛しているものを棄てるような
そんな勇気は持てないから

嘘ばかりを重ねれば
いつかあなたに辿り着けそうで

愛ばかり見詰めれば
いつかあなたに愛されそうで

このままだと怖くて
流されてしまいそうで

それでも愛だと
信じていたから

美しいほどの嘘は
鮮やかに彩って

馨しいほどの嘘は
雷のように放って

麗しいほどの嘘は
温かく蕩けていく

愛おしい嘘を身に纏って
咋に魅了する

存在してはいけない
生きて居てはいけない

幸せを手にしたような錯覚を
ばら撒くくらいなら

幸せなんて
知らない方がいい

服膺 [02月]

ほら
今にも消えてしまいそうだよ

君との未来が

ほら
こうやって終わっていく

大切な時間が

これが
二人の記憶

これで終わったのだと
もう夜は明けないのだと

こんな痛みを感じて
ようやく分かった

これが
二人の結末

繰り返す日常は
いつしか当たり前に存在して

感じる想いは
いつしか折り重なっていて

望んだ未来に
辿り着いたのだと

今なら言えるだろうか

確かめた愛情に
触れたのだと

僕に言えるのだろうか

僕の夢は儚く消えて
僕の愛は脆くも崩れ去る

君には届かないから
君とは生きられないから

思い出は時間を重ねた証
君と二人の時間

他の誰かには変えられない
他の何かでは変わりようがない

今さら何が
愛だというのだろう

今になって何を
愛だとしたいのだろう

君を守れなかったのに
君と生きられなかったのに

雪華 [02月]

形が変わっても

あなたの存在までが
消えるわけじゃない

目の前から消えても

あなた自身が
いなくなるわけじゃない

時を刻めば
互いが進めば

確かに変わっていくけれど
変化は止められないけれど

それが
傷つける理由にはならない

それを
傷ついた理由にするつもりもない

変わらなければよかった
変わりたくはなかった

そう思うこともあったけど
そう感じたこともあったけど

それでも
変わり往く時間を止めることはできず

どうしても
移り往く季節は彩を増していく

立ち止まっているのは
自分だけだと言われているようで

佇んでいるのは
望んだことだと示されているようで

癒えない傷を
あなたのせいにすれば

少しでも楽になれると思った

埋まらない溝を
何かのせいにすれば

少しでも誤魔化せると思った

なのに何も変わらなくて
それは二人を壊しただけ

二人の未来を
溶かして消えただけ

抱き締めて

凍えてしまわないように

抱き止めて

逸れてしまわないように

あなたの中に
いつまでも留まりたくて

あなたの全てを
いつまでも感じていたくて

想いは募るばかりで
願いは溢れるばかりで

雪のように脆く

溶けてしまわないで

夢のように儚く

消えてしまわないで

疆界 [02月]

凍えた寒さを
心ごと温める

何時しか寒さすら
感じなくなっても

触れるあなたは
変わりようのない愛

私はあなたの腕に抱かれ
あなたの熱と混じり合う

何が自分なのかさえ
どれが本当なのかさえ

区別なんかつかなくていいから
答えなんていらないから

こんな時間をあとどれくらい
あなたと共に居られるだろう

大切な一時をあとどれほど
こうして一緒に居られるだろう

苦しいはずの想いさえ
あなたとなら溶けて消える

辛いはずの現実さえ
あなたとなら乗り越えられる

夢を見ることも怖くない
今を生きることさえ辛くない

あなたに触れられるだけで
全てが解き放たれるようで

どれほどあなたを
愛しているのかを

それほどあなたを
愛していたのかと

否が応にも知らしめるのは
無理矢理に気付かせるのは

辛いはずの現実
触れられないはずの夢

あなたという愛を
あなたと紡いだ今を

もう放さない
放したりしない

陶酔 [02月]

愛して
もっと

私だけを

呼んで
もっと

私の名を

触れて
もっと

私のここを

そうすれば
もっと

感じるから

もう
あなたしか

感じないから

あなたが
いないのなら

もう
どうでもいい

この世の
何もかもが

この世の
全てが

もう
どうだっていい

もう
あなたしか見えない

もう
あなたしか感じない

何もしなくてもいい
あなたがいればいい

あなたさえいれば
こうしてさえいれば

何もなくても
誰もいなくても

構わない

愛して
ずっと

一緒にいたい

これからも
ずっと

二人でいよう

金鴉 [02月]

溶け合うほどに

あなたに呼ばれる
僕の名は

始めて聞いたような
昔から知っていたような

か細い声で
切ない声で

切れ切れに囁き
僕の耳を揺さ振る

目合うほどに

絡まる視線は
僕を見詰め

捕らえられたように
身動きすら取らせずに

深く輝いて
冷たく光り

瞬くほどに
僕の心を擽る

あなたが居ればいい

触れられなくても
構わないから

あなたが居さえすればいい

愛されなくても
忘れないから

ずっと知っていたはず
きっと分かっていたはず

言葉が消えてしまいそうで
夢が途切れてしまいそうで

呼吸が止まってしまいそうで
涙が零れ落ちてしまいそうで

愛は何時までも変わらないなら
心が何時までも同じならば

あなたには届くはず
あなたにも伝わるはず

こんな強い願いも
こんな深い想いも

あなたと巡り逢うために
生まれてきたと

あなたと分かち合うために
今を誓うと

嘘でもいいから

あなたの唇で
言葉を止めて

幻でもいいから

あなたの指で
時間を止めて

風が止むほどに
今を見詰めて

雨を晴らすほどに
今を望んで

他に何も思い描けなくなるくらい
他は何にも容にできないくらい

ただ赦して欲しくて
ただ愛して欲しくて

触れた先に満ちた光は
あなたへと繋がる