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心頼 [09月]

何処となく触れていれば
何も考えなくとも

不安に駆られることもなかった

形に成っていけば
焦らなくても

立ち止まらずに済んだ

諦めにも似た感情が
安心感を与える

慣れ切った心と身体が
怠惰へ導く

このままでいいなんて
思ったことはない

だけど今は幸せで

手にしたものを
壊すことが

こんなにも怖いなんて
思っていなかった

間違いだって
何処か感じる

だけど今が大切で

手にあるものを
失うことを

こんなにも怯えるなんて
思ってもみなかった

誰かを何処かで
傷つけることを

したくはない

誰かが何処かで
傷つくことを

見たくはない

あなたが居れば
立ち上がる力になる

あなたと居れば
前に進む道標になる

だからその力を頂戴
これからも傍に居て

ずっと一緒だと信じられたのなら
奇跡を起こすことさえ信じられる

尽無 [09月]

我慢できるのなら
我慢してみればいい

耐えきれるのなら
耐えてみればいい

やれるというのなら
やってみればいい

あなたはいつだって
自分で抱えてしまうけど

あなたはどこだって
自分を隠してしまうけど

それはいったい
誰のためなの

それがいつか
何かのために

苦しくても
弱音も吐かず

悔しくても
素振りも見せず

いつも笑って
いつも変わらず

そんなあなたに
何て言えばいい

そんなあなたを
どう癒せるのかな

泣いていたって
苦しんでいたって

あなたにとって

役には立たないと
言われているようで

あなたに対して

意味などないと
突き付けられているようで

止めさせたいのに
やめさせたいのに

そんなことさえ
できなくさせてしまうほど

そんな思いさえ
抱かせなくさせるほど

あなたの笑顔に
勝るものなどない

私の前でまで

寂しい笑顔で
居ようとするのは

悲しむことを赦さずに
笑うことを強いる

私のせい

疑懼 [09月]

不安は
私から全てを奪う

あなたへの信頼も
揺るぎない自信も

最初の愛情も
最後の誠意も

聞けるわけがない
言えるわけがない

何よりも
私よりも

あなたが

あなたの方が
大切だから

こんなにも
愛しているから

混乱して
恐怖しか感じなくても

ずっと耐える
もっと耐える

あなたを

あなただけは
失いたくないから

ただひたすらに
愛しているから

あなたを
疑うばかりの
材料に溢れたとしても

あなたを
傷つけるばかりの
道具が増えたとしても

私が
言わなければいい

これ以上
見なければいい

何も
聞かなければいい

もう何も
しなければいい

あなたを
傷つけるものは

何もいらない

あなたが
悲しむくらいなら

私が
傷つけばいい

もうこれ以上

誰も傷つけないから
私しか傷つかないから

誰か
この不安を消して

どうか
この疑いを晴らして

このままじゃ
あなたを
傷つけそうで

このままじゃ
誰かを
巻き込みそうで

自分が
止められなくなる

微睡 [09月]

夢を見ていた

あなたに愛される夢
あなたに触れられる夢

あなたの
優しい眼差しは
まるで夢の中にいるようで

あなたの
優しい言葉は
まるで夢を見ているようで

あなたの
優しい微笑みは
まるで夢のよう

このまま目覚めないようにと
心から願った

優しい夢は
私を優しく包み込む

あたたかな
あなたの温もりに似て

もうこれ以上

何も望まない
何もいらない

これでいいと

言ってくれる
想わせてくれる

あなたを
想う気持ちに

不安も
翳りも
偽りも

何もない

ただ

ただの幸せしかない

この夢は
あなたの心の中

あたたかな
あなたの腕の中

夢はいつまでも
夢はどこまでも

私を幸せの虜にさせる

私を愛の虜にさせる

私を夢の虜にさせる

私は
あなたの虜

夢を見て
崩れ落ちる快感を

目覚めた後も
忘れることができない

あまりにも現実的な夢は

まるでまだ
夢の中にいるようで

それが
嘘でも真でも構わない

だって

まだこんなに
その感覚が残っている

ずっと

まだこんなにも
あなたを感じてる

まるで
大丈夫だと
言われているようで

まるで
あなたに
愛されているようで

まるで
あなたが
ここにいるようで

こんなにも
安心してしまう

ねえ
これは夢でしょう

ねえ
これはあなたでしょう

ずっと待ち侘びた
あなたでしょう

もう悲しまなくていいと
言って

もう目覚めなくていいと
触れて

もう生きていなくていいと
手放して

もう堕ちる前

もう死に往くだけ

やっと
あなたに逢える

揺曳 [09月]

あなたの声は
記憶の奥深くを

簡単に触れてしまうから

消した筈のことさえ
こんなに当たり前に蘇る

あなたの瞳は
心の闇深くを

簡単に照らしてしまうから

忘れた筈のことまで
こんなに普通に息吹く

生きていることを
感じたのは

あなたの言葉で

ときめくことを
知ったのは

あなたの視線で

理由は分からないけど
何ていうのか知らないけど

あなた以外では

何の意味も持たない
他愛ないことが

眩しいほどに輝くの

あなただからこそ

何の価値がなくても
大切だと言える

日々を過ごせるの

あなたが消えるのは
どれだけ時間がかかる

あなたを忘れるのは
どれほど涙が零れる

真赭 [09月]

このまま

嘘をつき続け
騙し続け

願ってはいけない今を
止めようとしている

行かないで

絡めた指が
触れ合う身体が
重ねた唇が

放れると

全てが流れて
行きそうな気がする

失いたくないのに
壊したくないのに

僕を置いて
行かないで

括れた腰を
引き寄せると

触れる寸前で
止まってしまう

これ以上は進めないと
暗示をかけるみたいに

あなたが遠く感じて
忘れられない

触れ合うことのない想いが

自分勝手に走り出して
抑えられなくなった

あなたの存在が

僕にとって
どんな意味があるのか

こんな状態になった今ですら
自分でも分からない

ただこんなにも
忘れられなくて

時間だけが
僕を通り過ぎて行く

僕は何も変わっていないのに
僕は此処に立ち止まったままなのに

時間は残酷なほど
誰にも平等で

容赦なく
僕から奪われていく

枯れることなく
溢れる愛情が

僕も
あなたも
苦しめている

このまま手放せばいいと
何度も思ったけど

そんな真似
できなかった

何よりも
誰よりも
僕自身よりも

愛した人
命をかけた人

ただ一人の
大切な人

あなたとの未来に

これ以上の先が見えないことを
知っていたとしても

たとえ苦しめているという事実を
突き付けられたとしても

この愛情を
止めることなんてできない

あなたのことを考えて
自身のことを考えて

放すべきだと
やめるべきだと

これで
諦めるべきだと
分かってる

それでも
苦しめてでも
止められないのは

あなたを失うことが
何よりも怖いから

あなたの全てが
僕自身から
千切れ堕ちて往く

苦しんでもいい
辛くてもいい

あなたさえいれば
他に何もいらない

今を失ってまで
手に入れた幸せを
喜んだりはしない

確かめ合った
この温もりが

僕の手から
零れ落ちていくのを

誰か止めて