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蹉跌 [06月]

愛してるって
言ってよ

好きだって
言って欲しい

何処か不安で
何かが足りない

いくら満たされていても
足りることがなくて

痛いほど分かっていても
嫌がる自分がいて

分かっているのに
困らせるだけなのに

言いたくなる
言ってもらいたくなる

ねぇ今
何を考えているの

ねぇ今
何を感じているの

見えない筈なのに
聞こえない筈なのに

如何しても想ってしまう
如何しても探してしまう

重なるほどに
溶けてしまいそうになる

交わるほどに
逸れてしまいそうになる

あなたに
しがみついて離れない

決して
あなたから放れない

このままじゃダメなこと
分かっている

今のままじゃダメだって
知っているけど

ねぇもっと
傍に居たのなら

何かが変わっていただろうか

ねぇきっと
笑って居たのなら

何かが変わっていたんだよね

雨雫 [06月]

見詰めていたら
真っ白な霧に包まれる

満ち溢れるほどに揺れて
零れ落ちるほどに濡れて

何時しか滴り落ちて
深い靄がかかる

此れが何かなんて
知らなかった

何も感じなくても
零れ落ちるから

痛くない
辛くない

仰向いて居れば
涙は零れない

俯いて居れば
涙に気付かれない

それが今の私に
できること

それしか私には
できないから

何も見えなくなっても
何も触れられなくても

立ち竦むことしかできなくて
立ち止まっているしかなくて

この雨が止めば
あなたに逢いに行こう

この夜が明ければ
あなたに伝えに行こう

やっと逢える
やっと言える

待ち侘びて
待ち草臥れて

決して忘れるはずのない
あなたの姿まで

忘れてしまいそうで

決して消えることのない
あなたの思い出まで

消えてしまいそうで

こんな短い時間さえ
こんなに震えてしまうほど

ずっと怖かったけれど
ずっと怯えていたけれど

大切なあなたに
たった一人のあなたに

愛してるって
伝えたいから

露命 [06月]

聞こえないふりをして
見えないふりをして

心を閉ざすのは

型に嵌まった
いつもの手段

何も感じていないのだから
何もしていないのだから

どちらにしろ同じ事

誰かと繋がることや
何かを求めることは

始めから
望むはずもない

どんな環境でも
ひどい状況でも

全てが慣れる
いずれ馴染む

どんなに
辛くても

どれほど
苦しくても

まるで
始めから

望んでいたのではないかと
思うほどに

まるで
こうなることを

気付いていたのではないかと
思うほどに

ただ堕ちていくだけ
ただ壊れていくだけ

これが私だと
これがあなただと

これが互いの関係だと
これが当たり前だと

勝手に
捻じ込められる

抵抗も
させてもらえない

次第に
そんなつもりも
なくなって

ここから
抜け出たとして

この先に
何があるというのだろうか

こんな時間を
いつまで生きるのだろうか

こうして

壊れていくことも
崩れていくことも

こんなにも

自覚しておきながら
知っていながら

他人も
自分ですら

どうすることもできなくて

生きながら
魂を持たないのは

死んでいることと
何が違うのだろうか

そんな生き方を
したからといって
何が悪いだろうか

こうやってでも
生きていることを
誰も見てくれない

誰も知らない
何も知らない

それでも
ただ生きる

解脱 [06月]

変えようのない未来を
壊す力さえ残っておらず

救いようのない現実を
進む歩みさえ止まってしまう

自分で助けを
求められるほど
強くはない

誰かが助けてくれる
夢を見るほど
幼くもない

穢した夢に縋ったら
何処に連れて行って
くれるだろうか

破れた心を握り締めたら
何時か飛び立てる日が
くるだろうか

始めから嘘だと
全てが幻想だと

言い聞かせて
逃れられるのなら

言い包めて
逃げ切れるのなら

それでいいから
この羽根を捥いで

それで構わないから
この四肢を奪って

地獄から
逃れようとする
この心を

天国を
夢見ようとする
この魂を

壊して欲しい
失くして欲しい

自分のものなんて
何一つ持っていない

与えられたものなんて
何一つなかった

今更失うものなんて
何もない

今から叶えられるものなんて
夢見ない

当為 [06月]

生きている意味など
見つからない

生きている価値など
在る筈がない

どれほどの人生なら
生きていいのだろう

どれほどの人間なら
笑っていいのだろう

誰に何を
赦してもらえれば

此処に居る今を
求めることができるだろう

何処で何を
救ってもらえば

生きる今を
望むことができるだろう

呆れるほど長い時間
息を殺して

果てなく深い闇に
身を潜める

生きているなどと
どうやって証明できるだろう

生きているはずだと
どうやって言えるだろう

開けたら流れる
紅いはずの血は

いずれ枯れる

掴めば脈打つ
律動するはずの心は

いずれ果てる

どうかこのまま
なかったことにしないで

どうか全てを
消してしまわないで

此処に居るのは誰
此処に感じるのは何

痛みしか
運んでこないのに

苦しみしか
伝わらないのに

生きることの全てが
無意味に見えても

愛することの意味が
無駄に輝いても

生きろと伝えるのは
生きていると認めるのは

私ではなくて
あなただから

一向 [06月]

あなたしか愛せないと
あと何回伝えればいい

あなたしかいないと
あと何度言えばいい

あなたしか見えないと
どれほど強く抱きしめても

あなたは
どこか不安げで

なぜだか
いつも悲しげで

俺の言葉も
この愛情も

信じられずにいる
感じられずにいる

それでもいいと
全てを受け止めるから

それでもいいと
もっと愛を伝えるから

何も怖がらないで
何も恐れないで

俺が愛してさえいれば
あなたが愛に溺れてしまえば

他には何もいらないと
もっと俺が欲しいと

あなたは
きっと
言うはずだから

あなたは
そう
望むはずだから

あなたの心が
いくら彷徨ったところで

あなたが生きているのは
俺の愛の中だけ

だから俺が
掴まえおいてあげるよ

どこにも
飛んで
往かないように

決して
ここから
放れないように

何も気付かなくていい
何も分からなくてもいい

俺だけを見て
俺の腕に抱かれて

それ以上は
何もいらないと

言わせてあげる
思わせてあげる

だから
ここにおいで

俺の傍に

ずっと
腕の中にいて

もっと強く
痣となるくらいに
抱き締めてあげるから