SSブログ

欺瞞 [11月]

白い指の隙間から
微かな音を立てながら

何事もなかったかのように
何も気付かなかったかのように

まるで抜け落ちるように

何も心にかからない

てのひらには

全てを失った
忌わしい痕跡だけが

纏わり付いている

愛を感じさせて

形としての代用品はいらない

あなたが私を
愛しているという事実は

目に見えない
手に届かない
何にも触れない

だから

不安を払い除けるほどの
愛を感じさせて

あなたは私のモノじゃないから
いずれこの手から離れるから

喚いても
嗁呼しても

もっと感じていたい

それしか
あなたと繋がる手段がないなら

繋ぎ止めるために
差し出した身体

あなたが受け取ってくれるなら
心もあげる

お金がないと
買えないことを
知っているから盗んだ

言っても無駄だと
分かっているから
口を噤んだ

それと同じこと

あなたが
欲しかったから
奪った

あなたが

私のモノだという
証が欲しかったから
傷つけた

何がおかしいのか
間違えているのか

あなたがどうして
哀しい貌をしているのか

分からない

あなたは私が
欲しいと言えば
与える

どうして
いつもそう

抵抗もせずに
なすがままに

泣きながら
受け入れる

私のことしか
考えない

どうして
もっと
声を荒げない

手を伸ばせば
心を寄せれば
返そうとする

自分を顧みることもせず
相手を感じることもせず

そんな優しさなんていらない

それは虚妄でしかないことを
知っているのに

本来向き合うモノから目を逸らし
相手のせいにしようとしている

時間をかけて
溶け合った先には

再び元に戻るふたり

まるで
出逢ったことが
嘘のようで

溶け合ったことが
なかったかのようで

ふたりとも傷つく行為を
こうして繰り返していることが

ふたりを繋ぎ止める最後の方法

だからやめるわけにはいかない

だからもっと

今よりももっと

私のために
全てを擲って

こんなにも
あなたが欲しい

このまま手を拱いて
あなたを失うくらいなら

あなたを傷つけたとしても
自分のモノにしたいというのは

自分の我が儘だと
痛いくらいに
刻まれている

それでも
止めることができない

今さら
辞められない愚弄を
あなたが始めた

私には止められない

これ以上
望まないのなら
私が欲しくないのなら

あなたが
この愚弄を終わらせて

あなたにだったら
殺されても構わない

その指で
私の命を奪って

真っ赤な血で
私に染まって

二度と消せないように

ずっとあなたに
留まり続けるように

何事もなかったかのように
私の存在を消してしまわないで

あなたが悪いわけじゃない
あなたを悪者にしたいわけじゃない

あなたを突き落として
私も溺れた

私の責任

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0